7月19日の日曜日。 昼くらいに起きてKちゃんの友達が教えてくれた蟹花农に向かう。 ホテルのロビーでWeChatを使って地下鉄に乗る方法を教えてもらい、世界之窗駅から地下鉄1号線に乗り、終点の羅湖駅へ。 車内は混み合っとったけど、思ったよりも人々は静か。
羅湖駅は香港との玄関口らしい。 駅を出ると目の前にはでかい羅湖商業城(Luohu Commercial City)。
ここは、日本人が想像するショッピングモールとはまるで違う。 細い通路の両側に小さな店舗が隙間なく並び、服、バッグ、時計、お茶、雑貨、電子機器。客引きの声が絶え間なく飛び交ってる。
ホテルの横に併設されてるモールほど高級感はない。洗練されてもない。 でも、この雑多さこそが「中国に来た」って感じがした。 生活感、人の熱気、商売の勢い。 それらが全部混ざり合った、生々しい中国。
で、目的は、この商業城の中にある「蟹花农(XIEHUANONG)」という店。 ところが、これがなかなか見つからん。 スマホの地図を見ながら歩いてると、一人の若い中国人女性が話しかけてきた。 おそらく客引き。 私たちが蟹花农を探していることを伝えると、一緒に探してくれるとのこと。 商業城の中を歩き回り、スマホで調べて誘導してくれる。 その途中、中国お姉さんと案内係?のおばちゃんが(おそらく)店の場所を巡って激しく言い合いになった。 もちろん中国語なので何を言っているのかは分からない。 中国語の言い合いは声でかいから怖かった。笑
「あっちだ。」 「いや、絶対こっち。」
多分そんなやり取り。 結局、そのおばちゃんのおかげで無事に店へ到着した。 広くて迷って疲労しかけてたから今でも感謝。
「蟹花农」
店内は派手じゃない。 地元の人が普通に昼食を食べに来るような雰囲気。 ここで人生で初めて食べたのが、上海蟹の餡掛け。 私はご飯にかけるタイプ。 Kちゃんは麺にかけるタイプを注文した。 あと餃子みたいなやつ。 店員さんがいうには餃子じゃないらしいけど、見た目は完全に餃子だった。
で、上海蟹の餡掛けね。 濃厚な蟹味噌の香り。 見た目よりもずっと上品な味。 上海の荒波で育つ蟹(妄想)の旨味だけが何層にも重なって口の中へ広がる。
「美味い、美味すぎる。」そんな感動。 このお店は本当におすすめ。ローカルのおすすめは本当に美味し。
で、もう一つ印象に残ったのがお店の店員さん。 私の言葉(英語)は通じない。(Kちゃんは中国語話せるけども。) それでも終始笑顔で料理を運び、食べ方を身振り手振りで教えてくれる。 現地の人との触れ合いは、その出会いで国の印象まで変えてしまう。 「中国の人、優しい」 そんなことを改めて感じた昼食だった。
で、まさかまさか。 中国お姉さんがこの食事を食べ終えるまで店の前で待ってた。
営業執念すごいな。
で、「ショッピングするでしょ?」的なこと聞いてくる(中国語わからんけど)。 で、このあとは「華強電子世界に行くのよ」と日本語でずっと伝える。 Kちゃんは客引きに中国語話せるとバレると厄介だから終始無言を通してた。
で、中国お姉さんがスマホをこっちに向けてくるの。翻訳機ね。 で、めっちゃ日本語で華強電子世界って言った。 そしたら中国お姉さんが落胆した感じで「あぁ、ok byebye.」と。 我々は若干の罪悪感を覚えた。
で、食後は徒歩数分のShangri-La Shenzhenへ。 商業城の喧騒から暑い中少し歩いてホテルへ一歩入った瞬間、空気が変わる。
磨き上げられた床。 静かなロビー。 心地よい香り。 スタッフの落ち着いた接客。 やっぱり高級ホテルには独特の安心感がある。 旅行をしていると、こういう空間へ入るだけで自然と気持ちがリセットされる。 長居はせんかったけど、それだけでも十分。
その後はタクシーで華強北(Huaqiangbei:華強電子世界ね)へ向かった。 世界でも最大級の電子街として知られる場所。 深圳が「世界のIT工場」と呼ばれるようになった背景には、1980年に中国初の経済特区へ指定されたことがある。 海外企業の工場が次々と集まり、部品を作り、組み立て、世界中へ輸出する。 その巨大なサプライチェーンの中心へと成長したのが華強北だった。
ここは秋葉原とは少し違う見たい。 今の秋葉原が完成品を売る街だとすれば、華強北は「世界中の電子機器を支える裏側」がそのまま街になったような場所。
歩けば歩くほど、人、人、人。 建物、建物、建物。 店、店、店。 LED。 スマートフォン。 SSD。 基板。 ケーブル。 ドローン。
ありとあらゆる電子機器が視界を埋め尽くしていく。 今回はドローンとSSDを中心に見て回った。 もっとマニアックで、エンジニア向けの商品が並んどるかと思ったけども。 実際には、スマホケースや充電器、安価なアクセサリーなど量販品も多く、「安かろう悪かろう」という印象の商品も少なくなかったわ。
まぁ探せばもちろん掘り出し物もあるんかもしれんが。
とはいえ観光客として訪れるには、広すぎる。 人が多すぎる。商品が多すぎる。 情報量が圧倒的で、歩いているだけでもかなり体力を消耗した。 結局、何も買わずにホテルへ戻る。 それでも、まぁ世界中のものづくりを支える街の熱量と、電子産業で生計を立てる人々のエネルギーをこの目で見られたことには、大きな価値があった。
帰りはDidiを呼び、The Westin Shenzhen Nanshanへ戻る。 Kちゃんは部屋で休憩。 私はクラブラウンジへ。 なぜなら、この日の深夜にはワールドカップ決勝戦。 VPNを使って、オーストラリアの公共放送SBSで視聴できないか試してみる。 接続先を変えたり、設定を変えたり。 いろいろ試したけど、結局うまくいかず。
「これは見るの無理かも。」
と思いつつ、試行錯誤しとったらホテルのテレビで決勝戦を放送しているチャンネルがあるとのこと。一番シンプルな方法が、一番確実だった。 異国では簡単な方法も簡単じゃなくなるね。
深夜。 小さなアラームでなんとか起き上がり、Kちゃんを起こさんようにテレビの音量を消す。静まり返った中国、深圳のホテルで、一人ワールドカップ決勝を見届ける。 今回の大会は、アメリカ・カナダ・メキシコの3か国共催、そして48か国へ拡大された新フォーマットで開催された、歴史的なワールドカップ。
約1か月にわたり世界中が熱狂した大会も、ついに最後の90分を迎える。 決勝は、Lionel Messi率いるアルゼンチン対スペイン。 スペインが試合を優位に進め、1-0で勝利。
アルゼンチンは惜しくも連覇を逃した。 それでも、この敗戦でMessiの功績が下がることは決してない。 20年近く世界最高峰でプレーを続け、ワールドカップ優勝という最大の夢も掴み、一つの時代そのものを築き上げた。 勝敗を超えて、彼はすでに人類史上最高のサッカー選手。
テレビは無音。 聞こえるのはホテルの空調だけ。 深圳の夜中、一人で静かにワールドカップ決勝を見届けた時間。 それもまた、この旅行を思い返したときに浮かぶ景色の一つになった。